目次

  1.  はじめに
  2. 「音が重なる」「音がにごる」とは?
  3. 【初級編】基礎から学ぶ:音をきれいに分離するための考え方
  4. 【中級編】ペダル・和音・声部の分離と意識の使い方
  5. 【上級編】演奏中に脳内で分けるトレーニング方法
  6.  初心者でもできる音量コントロール練習メニュー
  7.  練習におすすめの教材と曲
  8.  まとめ

1. はじめに

「自分で弾いているときはきれいだと思ったのに、録音を聴いたら音がにごっている…」
「和音を押さえているだけのはずなのに、何のメロディかわからない…」

ピアノや多声音楽を演奏する人の多くがぶつかる悩み、それが**“音の分離”の問題**です。
今回は、「音と音が重なって聞こえる」「メロディが埋もれてしまう」問題に対し、レベル別に具体的な解決法を紹介します。


2. 「音が重なる」「音がにごる」とは?

演奏で「音が重なって聞こえる」とは、本来聞かせたいメロディーや声部がほかの音に埋もれてしまう現象を指します。

代表的な症状:

  • 左手の伴奏が大きくて右手の旋律が聞こえない
  • 和音を弾くとすべての音がベチャっと混ざる
  • ペダルを使った途端に音がもやもやする
  • 一番上の音が聞こえず、中間の音ばかり目立つ

原因の多くは、「音を同じように扱ってしまっていること」です。


3. 【初級編】音の分離を覚えるための第一歩

■ まずは「メロディだけを弾く」練習

初心者がまずやるべきことは、何を主役にするかを決めて、それだけを弾くことです。

例:右手で「ドミソ」、その中の「ソ」がメロディーの場合

  • 最初は「ソ」だけを弾いて、音の位置と音量の感覚をつかむ。
  • 次に「ドミソ」を弾きながら「ソ」だけを強く(音の芯をもって)弾く。

これを主役の声を太くする練習と呼びます。


■ 練習例(右手和音):

  1. 和音「ドミソ」を弾く
  2. 「ソ」だけを強調(他の指は軽く)
  3. 「ソ」だけを抜き出して弾いて確認
  4. 再び和音を弾き、意識して「ソ」を際立たせる

このように、最初から全部を弾かない・弾き分ける感覚を養うことが大切です。


4. 【中級編】ペダルと音量の使い分けで分離する

■ ペダルがにごりの原因になる

ペダルを踏みすぎると、どんなに丁寧に弾いても音が混ざってにごります

対策:

  • ペダルを「全踏み」ではなく「半踏み」「瞬間踏み(リズムごとに浮かせる)」に切り替える
  • 主役の音だけを響かせる意識で踏む(例:和音の一番上の音を残す感覚)

■ 左手と右手の音量差を意識する

メロディーは多くの場合、右手の高音域にあります。
左手の伴奏が大きすぎると、メロディーが消えてしまいます。

練習法:

  • 左手だけで弾いてみて、「限界まで小さい音」で弾けるか試す
  • 右手だけで弾いて、はっきりした輪郭のある音を出す
  • 両手で合わせるときは「左手はささやき、右手は歌う」

5. 【上級編】脳内で声部を“別人扱い”する

■ 聴覚イメージの分離

上級者になると、音を物理的に分けるだけでなく、頭の中でも分けることが必要です。

たとえばバッハの3声インヴェンション:

  • メロディー(上声)
  • 中声(対旋律)
  • 低音(ベースライン)

この3つを別の“キャラ”として演奏する意識を持つと、分離が劇的に改善されます。


■ 脳内シミュレーション練習

  1. 楽譜を見ながら、3つのパートそれぞれに「声・性格・感情」を与える
  2. それぞれの声部だけを歌ってみる(ピアノなし)
  3. 実際の演奏で「上声=朗々と歌う」「中声=内声の語り」「低音=支え」として意識して弾く

この方法は、頭の中で同時に複数の世界を描く訓練になります。

6. 初心者でもできる音量コントロール練習メニュー

音の分離を良くするためには、「音量(ダイナミクス)」を細かくコントロールできることがとても重要です。
初心者でも取り組みやすい、具体的な音量練習メニューを紹介します!


■ 音量コントロール練習① 【単音編】

やること:

  • 1つの音だけを、ささやくように小さく弾く
  • 次に、はっきり大きく弾く
  • これを交互に10回ずつ

ポイント:

  • 小さな音も鍵盤にしっかりタッチする(浅い叩きではなく、支える感じで)
  • 大きな音でも手をガチガチにしない

例: ド → 小さく → ド → 大きく → 繰り返し


■ 音量コントロール練習② 【和音編】

やること:

  • 右手で「ドミソ」を同時に弾く
  • 「ソ」だけ大きく、それ以外は小さく弾き分ける

ポイント:

  • 鍵盤に指を置いた時点で、どの指を強く・弱くするか意識する
  • 音を出す瞬間だけでなく、鍵盤に乗る段階から意図を持つ

■ 音量コントロール練習③ 【両手バランス編】

やること:

  • 右手でドのメロディー(単音)、左手でドミソ(和音)を弾く
  • 右手を主役にして、左手をできるだけ小さく

ポイント:

  • 左手の和音が「背景音」になるくらいの意識
  • 右手メロディーは、輪郭を持たせて歌うように

【初心者向けワンポイントアドバイス】

  • 音を出す前に「主役」を決める
    (今は右手?左手?どの音?)
  • 小さく弾く=力を抜く、ではない!
    (支えながら柔らかく)
  • どんな小さな練習でも録音して客観的に聴く
    (意外と感覚と現実はズレていることが多い)

この基礎力をつけると、どんな曲でも音の分離が自然にできるようになります!


7. まとめ

音が重なってにごるのは、「うまく弾けない」のではなく、「どう聴かせるか」が未整理なだけです。
音の分離は、物理的なコントロール頭の中の整理両立が重要です。

演奏するすべての音に役割があり、それを明確に区別して弾けるようになれば、音楽の立体感は一気に変わります。

今日から、「ただ弾く」のではなく、「聴かせたい音を意識して弾く」ことから始めてみましょう!


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